★森野美徳『石原慎太郎の帝王学』WAVE出版,2002年10月。
a) 本書は,東京都知事の改革手腕と都市政策を検証する,という副題を付けている。慎太郎君の行政手腕を,ものすごく高く評価する。
だが,慎太郎チャンの悪いところは,全然みないでいる。その点に関してはまるで,日光東照宮の「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿と同じ。
いわば,贔屓の引き倒しの感の強い本である。
b) 「磯野家」と「石原さんち」を等置する「次男坊良純のいいぶん」を,そのままうけいれるところなどは,まったく〈マンガ〉チックな印象である。
c)
民主主義の政治体制のもとでは,帝王〔学〕は不要な遺物である。日本の天皇〔制〕に関しても,だいぶ以前よりそういう時代になっている。
こんなことは,わざわざ触れるまでもないものなのだが,著者の森野美徳さんは,どうもよくわかっていないようである。
つまり,「石原」本を売るためとはいえ,時代錯誤のタイトルを付した,といわざるをえない。
d) 著者の森野さんは「都政取材25年の敏腕ジャーナリスト」と謳われている。そうであるなら,石原慎太郎に対する批判的論及がないのは,摩訶不思議である。
ミイラ取りがミイラに成るまえに,つまり,もともとミイラだったミイラが,本書の著者だったわけである。
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