テロ容認を堂々といいはなち,恥じるどころか,すこしも憚ることをしらない日本「国辱」ものの石原都知事は,即刻辞任せよ!


付 論】★ 西村眞悟議員とテロ行為犯罪集団とのかかわり ★


=2003年12月22日宣告=





★ 筆者が1年半以上まえに記述した点 ★

 異見の持ち主に平気で暴力をふるったり,生命を奪うことさえ当たりまえだとするこの人物:石原慎太郎〔こんな軽率浅はかな政治家〕まさに,民主主義の破壊者,宿敵である。

 石原慎太郎を熱心に支持した〔する〕人々に対してでも,いったん緩急のさいはただちに,その刃が返され向けられてくることを警告しておく。

 この人の人生観:価値観は単純明快である。自分の気に食わない奴には,どんな仕打ちをくわえてもかまわぬ。すなわち,その人々に天誅が下るのを待つだけでなく,自分が成敗してもよいのだと考えている。それはまったく,暴力的な精神構造=テロの自認であり公認である。


その後の石原慎太郎君−2001年4月以降−(下記,筆者のホームページ)  より。

 http://www.aa.alpha-net.ne.jp/baebu/ishi-april.htm


★ その後に判明した事情 ★

 2003年9月10日,「建国義勇軍」を名のった「刀剣の会」(会長,村上一郎)のある会員が,外務審議官宅に爆発物とおぼしき不審物をおいた事件に対して,石原慎太郎都知事は「爆弾がしかけれらて当たりまえの話だ」と発言した。

 村上一郎は,「あんなりっぱな人物=石原慎太郎だって,われわれのやったことを肯定していると,満足げだったという。

 

『朝日新聞』2004年4月29日朝刊 参照。




も く じ

 ● 石原知事「爆弾しかけられて当たりまえ」と発言,不審物事件

 ● 2003年12月22日に報道された記事

 ● 2003年12月23日に報道された記事

 ● 筆者の論評:その1

 ● 筆者の論評:その2

 ● 石原都知事に日弁連が警告書

 ● 西村眞悟議員「征伐隊事件」への関与

 西村眞悟議員のテロ行為を煽る言説




 

石原都知事爆弾しかけられて当たりまえ」

と発言,不審物事件

 

 2003年9月10日,石原慎太郎東京都知事は,外務省の田中 均外務審議官の自宅で発火物とみられる不審物がみつかった事件について,「爆弾をしけられて,当ったりまえの話だ。いるか,いないかわからないミスターXと交渉したといって,むこう(北朝鮮)のいいなりになっている」と発言した。

  http://www.asahi.com/special/nuclear/TKY200309100265.html

 

 上記の記事は,石原慎太郎東京都知事が2003年初秋,残暑まだきびしいころに放った無責任なテロ容認発言」を伝えたものである。

 ところが,2003年12月19日,『建国義勇軍』や『国賊征伐隊』などと名のって銃弾を撃ちこんだ事件で,岐阜県の刀剣愛好家団体の会長ら6人が逮捕された。

 その団体「刀剣友の会」は,一連の犯行のひとつとして,幸いにも未遂に終わったが,外務省の田中 均外務審議官の自宅に爆発物をしかけていた。

 石原慎太郎都知事は,この犯罪行為を当ったりまえの話だ」と断定した。

 このような人間が日本国首都の代表者を務めている。日本の恥,いや世界中の,人類‐みなにとっての,大 恥 を具現しているのが,この男ではないか。

 

 −−筆 者:裴 富吉はここに,石原慎太郎という人間が東京都都知事の職位にまったくふさわしくないことを宣告し,即刻,退任を求めるだけでなく,さっさと隠遁生活に入ることを勧告する。 






 以下にまず,2003年12月22日に報道された記事を紹介する。




 ■ 外務審議官宅設置の不審物,他3事件と構造酷似  


 東京都目黒区の田中 均・外務審議官宅に爆発物を模した不審物がおかれた事件で,この不審物は2003年7月から8月にかけて,新潟市のハナ信用組合新潟支店など3カ所でみつかった不審物と構造が酷似していることがわかった。

 警視庁や大阪府警,新潟県警などの合同捜査本部は,田中審議官宅事件で逮捕した「刀剣友の会」幹部らがほかの3事件にもかかわった疑いがあるとみている。

 調べでは,田中外務審議官宅1階の駐車場わきにおかれていた不審物は,高さ約30センチ,直径約10センチのステンレス製ポットのなかに小型のガスボンベ1本が入っていた。

 ポットの口からはリード線が延び,外部のプラスチック製容器とつながっていた。容器の中には電池パックや電子基板が入っていた。容器はタイマーともリード線で接続されていた。

 ポットのそばに「建国義勇軍国賊征伐隊」と書かれた脅迫状がおかれていた。

 捜査本部によると,同じ構造の不審物は2003年7月29日に新潟市のハナ信用組合新潟支店,8月23日に福岡市の在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)福岡県本部と朝銀西信用組合福岡支店の計3カ所で1個ずつみつかった。

 ポットやガスボンベの大きさにちがいはあったが,3個ともリード線が装着されていた。また,田中審議官宅事件をふくむ4事件で使われていたポットは,いずれも大阪の同じメーカー製で,ガスボンベも東京の同一メーカー製という共通点もあった。

 田中審議官宅事件でおかれた不審物は,警視庁が同じ部品を使って複製したもので威力を調べたが,爆発する危険や殺傷能力がないことがわかった。このため捜査本部は「爆発物に似せた物や脅迫状をおいて,団体の威力をしめして脅迫した」として,最高刑が死刑の爆発物取締罰則ではなく暴力行為等処罰法を適用,友の会顧問で歯科医師の田中成治容疑者(50歳)を逮捕した。

 新潟事件などほかの3事件の不審物も爆発するしくみではなかったという。

 

  http://www.asahi.com/national/update/1222/017.html

 

 ■ 広島県教組銃撃容疑で男逮捕−建国義勇軍,逮捕12人に  

 広島市の広島県教職員組合書記局が2003年6月に銃撃された事件で,警視庁などの合同捜査本部は12月22日,熊本市田迎1丁目,職業不詳,木村岳雄容疑者(34歳)を銃刀法違反〔発射〕と建造物損壊の疑いで逮捕した。

 「建国義勇軍」などを名乗るグループによる一連の事件での逮捕者はこれで12人となった。

 調べでは,木村容疑者は2003年6月27日午後9時半ごろ,岐阜県を拠点とする刀剣愛好家団体「刀剣友の会」会長で会社役員の村上一郎容疑者(54歳)=銃刀法違反などの容疑で逮捕= らと共謀して広教組書記局に拳銃2発を発射して,窓ガラスなどを壊した疑い。調べに「かかわっていない。しらない」と否認しているという。

 捜査本部によると木村岳雄容疑者は,「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)熊本の関係者という。

 「救う会」は12月22日,同会熊本の理事だったことを認めたうえで同日付で解任されたことを明らかにした。さらに「容疑が事実なら『家族会』や『救う会』が展開してきた救出運動への重大な裏切り行為であり,許すことができない」との談話を出した。

 

  http://www.asahi.com/national/update/1222/026.html



 以下にさらに,2003年12月23日に報道された記事を紹介する



 ■西村眞悟氏――説明してもらいたい

〔2003年12月23日『朝日新聞』社説〕
 

 「刀剣友の会」の会員による事件が広がりをみせている。「国賊征伐隊」や「建国義勇軍」を名のる者が,田中 均外務審議官の自宅に不審物をおいた事件についても,新たに会の幹部5人が逮捕された。

 一連の事件に共通するのは,自分たちの主張に合わない者は暴力や脅迫で封じこめてしまえという発想であり,それを実行にうつしたテロ行為であることである。

 田中審議官が狙われたのも,その対北朝鮮政策が気に食わないという理由だった。アーレフ(オウム真理教から改称)道場や広島県教組を銃撃したとして捕まった会長の村上一郎容疑者は,この事件にもかかわっていた疑いがもたれている。

 危険きわまりない,この刀剣愛好家団体と関係していたのが,民主党の西村眞悟衆院議員である。

 友の会の最高顧問を務め,政治献金もうけていた。入院中ということで秘書が談話を代読したにとどまっているが,それで済むほど軽い問題ではない。議員活動を再開するまえに,国民に対して本人の口からきちんと説明してもらいたい。

 西村氏は談話で,事件は「寝耳に」だったと驚いている。容疑が事実とすれば「犯罪行為を断じて許すことはできない」と批判し,「政治家として道義的責任を感じる」とも認めている。当然だろう。こんな事件を引きおこす人物と親交があっただけで,政治家としての見識が疑われる

 一方で,村上容疑者について「私の信条をよく理解してくださる好漢」とよんでいる。かねて民族主義者を自任し,「亡国」を憂えてやまぬ西村氏は,日本のあるべき姿を語って意見が合ったのだろう。まさか相手がテロ行為に及ぶとは想像もできなかった,ということなのか。

 政治家に求めたいのは,「国賊」「天誅(てんちゅう)」といったことばが出まわる世相への警戒感である。そうした言葉がテロにつながりかねないという危険感覚にもっと敏感であってほしい。

 いわんや,テロを助長するような発言はもってのほかである。

 田中審議官宅の事件では,外務省を批判してきた石原慎太郎東京都知事が「爆弾しけられて,当ったりまえだ」といいはなった。弁明はあっても,撤回や訂正はない。

 その石原氏と西村氏は,雑誌でしばしば対談し,意気投合している。日中間で領有権をめぐる対立がある尖閣諸島に1997年,西村氏が勇ましく上陸したときには,沖合まで同行した。

 西村氏は,自由党と民主党の合併で民主党に移った。日本の核武装の検討まで主張する人でも無条件に入れるのか,疑問に思ったものである。民主党は西村氏と友の会の関係を調べる方針はしめしたが,党としての見解を述べるべきだろう。

 ことは,民主主義の基本にかかわる。師走の慌ただしさに紛らせてはならない。

 

 『朝日新聞』2003年12月23日朝刊「社説」。一部,「だ」の文章個所は「である」に修正した。


 


  【筆者の論評:その1




 

 「刀剣友の会」とその会長会社役員の村上一郎が起こした「銃撃あるいは爆弾状不審物による脅迫テロ事件」については,つぎのような登場人物たちと関連の諸要因を併記するだけで,問題の核心とその原因が一気に理解できる〔いっぺんに氷解する!〕はずである。

 @ 「刀剣友の会」村上一郎会長と西村眞悟国会議員との関係。

 A 西村信悟国会議員と石原慎太郎都知事との関係。

 B 石原慎太郎と北朝鮮拉致被害者蓮池 薫の実兄蓮池 透との関係。

 B 「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(救う会)熊本の関係者である木村岳雄(職業不詳)のテロ犯罪行為。

 C -1  「救う会」全国協議会会長の初代事務局長荒木和博は,拉致被害者5名が日本に一時帰国したとき,彼らに同行した北朝鮮関係者2名の殺害を当然視する発言を放って憚らなかった

 C -2 また,在日の北朝鮮系民族学校にかよう子どもたちが日本人による嫌がらせ・暴力をうけていることを,当たりまえとする発言もしている

 D さらにまた,同会佐藤勝巳代表は,北朝鮮にいる拉致被害者の家族を武力行使してでも奪回せよと,日本政府をけしかけている。この佐藤の主張は,蓮池 透も共有するものである。

 E 以上の項目をつなげて考えれば,こういう解説ができる。


 ●−1

 「北朝鮮の国家的テロ:拉致行為の被害者となった人たちおよびその家族」を支援・援助しなければならないといって,その救援活動をしてきた家族自身とその支援組織関係者のなかから,犯罪行為となる「突出した行動:テロ」を犯す者が登場してきた。

 その「突出した行動」=テロ犯罪行為は,

 a) 北朝鮮〔朝鮮民主主義人民共和国〕関係の在日する諸機関(金融機関,教育機関)や,

 b) 北朝鮮と諸関係をもってきた日本人がわ関係者〔外務省をはじめ与‐野党の政治家〕

などについて,その存在じたいが許しがたいものと絶対的に考える態度から起きたのである。

 ●−2

 あげくのはてが,「北朝鮮の国家的テロ:拉致行為の被害者となった人たちおよびその家族」と「その支援組織」とは直接関係のない犯罪組織までが,如上の a)  や  b) を「テロ行為・暴力的犯行の標的にする事件」を起こしたのである。

 実は,2002年秋以来「北朝鮮による国家的テロ:拉致行為の被害者となった人たちおよびその家族」と「その支援組織」のおこなってきた政治的な活動:世論喚起の動きに強く影響されたからこそ,「民主主義の基本精神」を全面的に否定するような,そうした犯罪的テロ‐暴力行為が生まれたといってよいのである。

 とりわけ,支援組織のひとつ「救う会」(「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」:会長 佐藤勝巳の熊本「支部」の代表者木村岳雄(職業不詳)が,「刀剣友の会」の成員として犯罪的テロ‐暴力行為にくわわっていたことが問題である。

 被害者家族の1人である横田 滋が代表を務める「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会が,「容疑が事実なら『家族会』や『救う会』が展開してきた救出運動への重大な裏切り行為であり,許すことができない」との談話を出して弁明をしたとしても,今回の事件発生は,彼らが組織する団体が本来有していた〈体質と活動〉に強い影響をうけておこったものである,という点に注目しなければならない。

 ●−3

 『家族会』や『救う会』はここ1年あまり,日本の世論に猛烈に働きかけるかたちで北朝鮮のテロ行為:拉致を非難しつづけ,日本社会をこの問題一辺倒にさせ,大騒ぎさせる態勢をつくってきただけでなく,日本国外務省の北朝鮮政策に多大な影響力を発揮,日朝国交正常化交渉を断絶させてもきたのである。

 しかも,『家族会』や『救う会』は,拉致被害者およびその家族・支援組織の立場・やりかたに関してわずかでも疑問を投げかけたり,あるいは,北朝鮮との国交正常化に寄与しようと議論をしたりする専門家や知識人を,必死になって排除・圧殺し,言論の弾圧‐封鎖にひとしいような攻撃(バッシング)もくわえている。

 そのせいもあってこの国においては,懸案である北朝鮮との国交正常化交渉に努力してきた日本政府外務省担当者や,在日朝鮮人関係の諸機関に対する犯罪的テロ‐暴力行為事件の発生をみて「当ったりまえだ」といってのけた人間が,なんと,いまも堂々と東京都知事を務めている。

 非常に残念なことに,最近の日本は,そのような異常さがまかりとおる国である。

 そして,あまつさえ拉致問題解決にとりくむある支援組織の1幹部は,2002年10月に日本人拉致被害者が一時帰国したさい同行した北朝鮮外交官を逆に拉致してしまい,どこかの海に沈めてやってしまえばよかったといったり,朝鮮学校の生徒・学生たちが暴力事件に遭っても当然だといったりもしたのである。

 ●−4

 以上,日本がわの関係者・関係組織の言説・行動をまとめて考えれば,「刀剣友の会」のテロ犯罪行為を起こした真因が,いったい,どこから生まれ,どのように合成されていったかその道筋を読みとることはたやすい。

 要は,北朝鮮の国家的犯罪を糾弾する人物や組織が,日本国内ではその正反対の関係になって現われ,相手:国〔や在日の関係者・関係組織〕に対してテロ行為をくわえることを「当ったりまえだ」といい,実際そのようにおこなわせる社会的雰囲気をつくってきた

 もちろん,そうした逸脱‐犯罪行為を発生させた責任は,日本社会全体とくに,マスコミ言論界の偏向した報道姿勢にもある。また,日本政府わけても,自民党の幹部や一部国会議員〔安倍晋三平澤勝栄西村眞悟など〕の強力な後押しも,その原因を提供するのにおおきく寄与した。

 ●−5

 ともかく,『家族会』や『救う会』は,北朝鮮の拉致被害問題に関しては,ものすごい圧力をマスコミ界にかけて報道管制を敷くことに成功し,自分たちに都合の悪い,あるいは気に入らない記事をいっさい書かせなかった。

 「彼ら」の姿勢を客観的にみるに,被害者の自分たちはなにをやっても許されるというような「絶対的な立場」に立っている。そして,それを逆手にとることによって,日本における「民主主義と自由」を絞め殺す作用をはたしてもきたといえる。

 したがって,最近における日本社会の情勢・雰囲気に照らして判断するに,このたび生起した「テロ的な犯行」は,必然的に誘引された出来事と観察できる。石原慎太郎流に倣って無責任にいってのければ,そんなこと「当ったりまえ」だ,という雰囲気を充満させてきた。

 今回の事件にまつわる「根本的な出立点:問題基盤」を検討するとき,「テロ的な犯行」を実行した犯人=「救う会」の1幹部の存在を,拉致被害者「救出運動への重大な裏切り行為であり,許すことができないとの談話」を出すことによって,自分たち=「被害者とその家族および支援組織」と関連のないものと切りすてるには無理がありすぎるというほかない。そのような弁解では,トカゲの尻尾切りにもならない。

 ●−6

 今回の事件をとおしてたしかに感得できるのは,北朝鮮拉致被害者の関係組織である『家族会』や『救う会』が,自分たちの主張に合わない者に対して,圧力や圧迫を執拗にくわえる姿勢,いいかえれば,政治力の行使や言論封殺で封じこめてしまえという発想に立っており,くわえて,それを実行にうつすテロ的行為さえ是認するごとき体質をふくんでいた,という事実である。

 


2003年12月23日,記述
 



 筆者の論評:その2




 

 「刀剣友の会」会長会社役員の村上一郎などの起こした「銃撃あるいは爆弾状不審物による脅迫テロ事件」を,朝日新聞以外の,日本経済新聞,毎日新聞,読売新聞は,どのように報道していたか。その3紙の該当「社説」を読んでみたが,石原慎太郎東京都知事の「テロ容認発言」に言及したものはない。

 上掲3紙の社説の内容は,ほぼ同じような記述であった(なお引用は一部分のみ)

 『日本経済新聞』2003年12月23日社説……題名:テロを生む土壌にメスを」

 自由にものがいえ民主的な政治がおこなわれている社会を脅かすテロは,芽のうちに摘んでおく必要がある。

 2003年11月から「建国義勇軍」などと名のり,朝鮮総連の関連施設や田中 均外務審議官宅などに銃弾が撃ちこまれたり不審物がしかけられたりした事件で,警視庁と8府県警は銃刀法違反容疑などで刀剣愛好会の会長ら12人を逮捕した。調べに対し,主犯格の「刀剣友の会」会長の村上一郎容疑者らは,犯行を大筋で認めている,という。

 幸い死傷者が出たり,建物が燃えたりする被害は出ていない。だからといって,みのがしていい事件ではない。自分の主張を暴力で実現しようとしたり,自分が気に入らないと考える政策や意見を暴力で封殺しようとしたりする行為は,断じて許すことはできない。

 テロ行為が民主社会の敵としてきびしく非難されるのは,暴力への恐怖をあおり「ものいえば唇寒し」という風潮を招くからである。

 事件の母体となった「刀剣友の会」の最高顧問に民主党の西村眞悟衆院議員が就任し,政治献金や選挙の応援をうけていた。まさかテロ活動をしっての上ではないだろうが,同グループがどのような活動をしていたかはホームページで公開されている。民主政治の担い手である国会議員としての責任が問われよう

  http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20031223MS3M2300723122003.html

 

 『毎日新聞』2003年12月21日社説……題名:「建国義勇軍事件−背後関係を徹底解明せよ」

 「建国義勇軍」や「国賊征伐隊」などと名のって北朝鮮関係団体の施設を銃撃したり,政治家に銃弾を送りつけた一連の事件で,岐阜県の刀剣愛好家らの任意団体「刀剣友の会」の会長ら役員6人が,警視庁公安部など9都府県警の合同捜査本部に銃刀法違反などの容疑で逮捕された。

 一連の犯行は右翼的思想に根ざしつつ,暴力によって対立する意見を封殺し,相手を畏怖,萎縮(いしゅく)させようとするものである。しかも,みずからは正体を隠し,不気味さを強調して社会全体へと効果の波及を図ろうとする犯行は,卑劣きわまる。

 あらためて指摘するまでもなく,民主主義は言論の自由を保障する一方であらゆる暴力を否定する。対立する意見にはあくまでも言論で対抗すべきであり,やくざまがいの暴力,脅迫は断じて許されない。

 だが,暴力や不気味さは人々に恐怖心以上に嫌悪感を抱かせるだけだ。自分たちの主義,主張を真に広めたいのなら,正々堂々と言論によって訴えるしか方策はないことをしるべきである。

 不可解なのは,民主党の西村眞悟衆院議員が「刀剣友の会」の最高顧問を務め,逮捕された会長が経営する会社などから政治献金をうけとったり,同会の宴席に出席するなど親しい関係にあったことである。最高顧問への就任は,逮捕容疑となった3件の事件の直後で就任後も事件は繰りかえされている

 西村議員は入院中だが,1日も早く,事件への関与の有無はもちろん,最高顧問を引きうけた理由,相互の思想的な影響などについて明快に説明すべきである。捜査当局の事情聴取にもすすんで応じるべきである。いささかでも暴力行為にかかわっていたなら,民主主義を率先してになう国会議員の資格はない

 歴史を振りかえると,不況が長びいたり,道徳的荒廃や所得格差などが問題化すると,テロ行為が起きている。今日もけっして楽観できる状況とはいいがたい。

 警察当局が不穏情報の収集や銃器対策などに力を入れるべきは当然だが,政策決定が不透明であったり,利権や不正・腐敗構造が一掃されないでいるようでは,この種の事件の病根は断ち切れない。政府や国会の責任も問われねばならない

  http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200312/21-1.html

  

 『読売新聞』2003年12月21日社説……題名:『征伐隊』逮捕−民主主義を脅かす卑劣な行為」

 正体を現わさないまま,暴力的手段で個人,団体の言論や活動を封じこめようとする。民主主義社会を脅かす,卑劣きわまりない行為である。

 「国賊征伐隊」や「建国義勇軍」を名のるグループによる拳銃発砲など一連の事件で,「刀剣友の会」の会長ら6人が逮捕された。

 言論には言論で戦おうとせず,テロなどの直接的な手段に訴えることは,その言論が敗北したも同然である。どんな理由があっても許されるものではない。会長は,会報のなかでみずからを「良識ある日本人」「誇りある日本人」だと書いているが,まったくあいいれない行為である。

 民主党の西村眞悟衆院議員が,2003年7月から「刀剣友の会」の最高顧問に就き,議員が支部長を務める政党支部は,会長が経営する会社から計210万円の献金をうけていた。

 西村議員は「政治家として道義的責任を感じる」とする談話を出したが,結果として,テロ集団に社会的な信用を与えていたことになる。責任は重大である

  http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20031220ig91.htm

 


 −−以上3紙の「社説」は,若干の相違もあるが,似たりよったりである。民主党の西村眞悟衆院議員の政治的責任に言及している点も共通している。

 西村に対しては,「民主政治の担い手である国会議員としての責任が問われる」のは,「テロ集団に社会的な信用を与えていたことにな」り,その「責任は重大である」からである。したがって,「いささかでも暴力行為にかかわっていたなら,民主主義を率先してになう国会議員の資格はない」とまで,批判を与えている。

 西村政治‐言論活動は,「建国義勇軍」や「国賊征伐隊」などを名のった「刀剣友の会」の会長たちをテロ行為に走らすような,強い影響を与えた。にもかかわらず西村,そのことへのかかわった責任を棚に上げたまま,事件発生後こういいわけしている。


西村 眞悟 談話

=2003年12月19日に西村がマスコミ向けに出した声明文=

 本日 私が最高顧問を務める「刀剣友の会」会長である村上一郎氏が逮捕されたとの情報に接しました。

 村上氏は,私の地元の支持者の紹介で平成11年ごろに知り合い,それ以降何度か招かれて刀剣友の会の会合に参加し,講演をしたこともありました。

 そして今年の7月ごろに村上氏より最高顧問就任の委嘱を受け,これを受諾したのです。

 今回の事件について,私自身事前に知らされていたこともなく,全く寝耳にのことであり,びっくりしています。会の趣旨と今回の犯罪がつながるのであれば問題でしょうが,そのようには承知しておりませんし,いまは事件の全容解明を待ちたいと 思います。

 私は,犯罪行為を断じて許すことができません。

 また私は,彼が犯罪者であるとの前提でお付き合いをしていたわけではなく,支持者の一人として,私の信条を理解してくださる好漢としてお付き合いしていたのであり,仮に彼が本当に犯罪を犯したのであれば,親しい友人である私自身が,最も強く彼を指弾しなければならないと考えています。

 このような嫌疑をかけられ,社会を騒がせた人と個人的な付き合いがあったという意味においては政治家として道義的責任を感じますが,いずれにせよ今は全容解明を待ちたいと思います。

 

  http://www.n-shingo.com/



 −−要するに,西村眞悟は自分に結果的な責任はなく,道義的にみて,テロ犯罪を起こした「刀剣友の会」会長などとのつきあいがあった事実に責任を感じるにすぎない,といったわけである。

 西村回の事件について,私自身事前にしらされていたこともなく,まったく寝耳にのこと」だといった。だが,こういう弁解はいうまでもなく,「当ったりまえ」のことである。そんなことを西村が事前にしっていたら「止めさせなければいけなかった」し,もしも「気づいていて黙過したなら」まちがいなく,共犯者である。

 西村自身の政治的活動にとって助けとなる政治献金をうけた団体がテロ犯罪を犯し,しかも,西村という議員の政治信条に共鳴するかたちでその行為が起こされたのである。

 以上は,「いささかでも暴力行為にかかわっていたなら,民主主義を率先してになう国会議員の資格はない」という重大問題に該当するのが,西村という国会議員であることを意味する。

 政治家のつたない常套的な用語法の駆使とはいえ,回の事件は事前にしらず,寝耳に水」などというごとき詭弁は,ほどほどにすべきである。西村の政治家としてのふだんの言論活動が,彼ら犯罪集団にとって追い風となった事実を否定できない。

 西村が「刀剣友の会」主催の講演会によばれて話をしたとき,「北朝鮮をやっつけなければならない!」という趣旨を,まちがいなく披露したはずである。この点は,ふだんにおける彼の言説から容易に推断してよいのである。

 そう推量できるとしても,両者の関係においては「いわゆる相乗作用(!)」も働き,両者の意志における直接の関連はないようなものの,いわず語らず:以心伝心的に「刀剣友の会」の犯罪行為が起こされたとみても,なんら不思議はないのである。

 また,政治家が政治献金をうけても,その相手との関係はみな個人的なつきあいでのものだとかたづける理屈じたい,そもそもおかしい。政治家としての公的なつきあいを個人的な関係にすぎない,といいわけする奇妙キテレツな弁解はとおらない

 それでは,法律にしたがい「公にもらったはずの政治献金」がその議員の政治的活動にではなく,個人的に費消されたものと理解していいのか? 政治資金法に関していえば,そんな理屈は通用しない。

 政治家の公的活動をまかなうためになされる政治献金が,政治家の「個人単位に献金される」ものであるからといっても,政治家「個人の生活費」のために当てられるべきものでないことは,当然である。

 −−要するに,「刀剣友の会」の会長である村上一郎個人」と政治家である西村議員「個人」とのつきあいは,政治献金や講演依頼などをつうじて「公的な交際」をしてきた。この公の「政治的なる個人間の交際」を,「個人的なつきあい」にかぎられたものと説明するのは,日本国の選良=衆議院議員とも思えないような幼稚ないいぶんである。

 西村よ,詭弁を弄することなかれ!

 


 
  −−西村議員の問題からつぎに,石原慎太郎 都知事の問題にうつる。

 驚かねばならないのは,上段に引照した日本経済新聞・毎日新聞・読売新聞の3紙すべてが,石原の「テロ容認発言」には一言も触れていないことである。

 「刀剣友の会」会長会社役員の村上一郎などの起こした「銃撃あるいは爆弾状不審物による脅迫テロ事件」は,田中 均外務審議官の自宅に爆発物のようなものをしかけ,テロ的に脅迫する事件もふくんでいた。

 その事件が発生したことをとらえて,田中 均外務審議官の自宅に爆弾をしけられて,当ったりまえの話だ」といってのけたのが,東京都知事の石原慎太郎であった。

 西村議員の事件への関連も重大事であるが,それ以上に石原都知事のそうした「テロ容認発言」のほうがはるかに深刻な問題である。筆者のしるかぎり全国紙で,その点を指摘・批判したのは,朝日新聞の社説しかなかった。

 いまや,日本のマスコミ‐言論界の衰退は末期的な様相を呈している。何人もの識者が,最近における日本社会をとらえて1930年代に似てきたという認識をしめしている。さもありなん,という感じである。

 石原都知事は,今回の「テロ行為」事件を起こした犯罪を当然視し,さらに煽るような発言をした。この日本という国は,その人間をろくに批判も指弾もしない。

 なんと情けないことか,なんと救いがたいことか。倫理的にずいぶん堕落,道徳的にひどく無神経……。

 慎太郎だけには,なにか超特権でも付与されている,とでもいうのか?

 


  2003年12月24日,記述
 

 


 

  石原都知事に日弁連が警告書−女性誌の「ババア発言」で

 

 2003年12月25日日本弁護士連合会(本林 徹会長)は,石原慎太郎東京都知事が2001年に,雑誌のインタビューなどで女性に差別的な発言をしたとして,発言の撤回を求める警告書を知事に提出した。

 石原知事は「週刊女性」の2001年11月6日号で,学者のことばを引用しながら「『文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババア』なんだそうだ。『女性が生殖能力をうしなっても生きているってのは無駄で罪です』って」などと述べた。

 警告書では「女性に対する暴力で,人格的に侮辱するものだ」と指摘している。

 この発言をめぐっては,都内に居住・勤務する女性らが石原知事を相手に,損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。

  http://www.asahi.com/national/update/1225/026.html

 

 −−筆者は,べつのページ石原慎太郎の都知事再選は不可である5 やたら女性〔=他者〕を蔑視し,大物ぶる都知事において,この男が骨絡みで身につけている「女性差別の野蛮精神」を批判した。

 東京都に住む女性たちはなぜ,そうした〈あからさまな女性差別〉を平然と発する東京都の為政者を敢然と阻止せず,再選させてしまったのか。

 また,日本国に生きるすべての女性はなぜ,女性差別をとおして典型的に理解できるように,この「差別のデパートメント・ストアーみたいな男」を指弾しないのか。

 慎太郎の発言は女性に対する暴力的な侮辱であり,「女性=人間」蔑視の価値観を披瀝した粗暴・野卑な言説であるのに,女性たちからそれほど反撥が出ていない。

 石原にいわせると,閉経期を迎えた女性「ババア」はみな,「生きているってのは無駄で罪」であり「もっとも悪しき有害なもの」なのである。この話にはむろん,慎太郎の女房→悪しき有害なもの:無駄で罪なババアもふくむものである。

 慎太郎にバカにされて反論も批判もなにもしない女性たちよ,女性がこのように,バカにされたままでいいのか,人間の半分を占める女性がそのように,コケにされつづけてもかまわないのか。

 なんと,不思議の国: 日 本 !

 


  2003年12月26日,記述
 

 


 

  西村眞悟議員「征伐隊事件」への関与を否定
        特別委員会の委員長就任は辞退するが,
                   政治献金は「返さない」

 

 2003年12月29日,一連の征伐隊事件で,主犯格とされる村上一郎容疑者(54歳)=銃刀法違反容疑などで逮捕=が主宰する「刀剣友の会」の最高顧問となっている西村眞悟衆院議員(民主党)は大阪府堺市内で記者会見し「事件は寝耳に。関与したことはない」と,再度述べた。

 村上容疑者とは「思想信条で共鳴し,個人的な信頼関係があった。交際に落ち度はない」との考えをしめした。

 そのうえで,「自分は弁護士でもあり,信条は罪を憎んで人を憎まずだ。一つの逸脱行動から全人格を否定することはない」と強調した。村上容疑者がわからの献金は返還せず,刀剣友の会最高顧問も「捜査の進展を待って判断したい」と辞めない意向を表明した。

 村上容疑者が計画したとされる田中 均外務審議官宅の不審物事件については「言語道断」と指摘しながらも,田中氏の対北朝鮮外交の姿勢に対し「国益に反する」と批判的な持論を展開した。 〔共 同〕

  http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20031229AT3K2901K29122003.html

 『日本経済新聞』2003年12月30日。

 

 2003年12月29日,民主党の西村眞悟衆院議員(55歳)は,大阪府堺市の市民会館で記者会見し,内定していた衆議院災害対策特別委員長への就任を「辞退したい」と語った。

 建国義勇軍などを名乗る銃撃事件で,自らが最高顧問を務める「刀剣友の会」の村上一郎会長(54歳)らが銃刀法違反容疑などで逮捕されたことから,「信頼関係にあった人物が犯罪行為に加担したことへの道義的責任」を辞退の理由にしている。

 西村議員によると,12月8日から28日まで脳内出血で大阪府内の病院に入院していたが,症状がよくなり退院した。一連の事件への友の会の関与はまったくしらなかったといい,「なぜあんな幼稚なことをしたのだろうと思う」。

 「村上氏と私が共鳴した思想は,銃弾をぶつけようなどという行動にむすびつく思想ではなかった」などと語った。

 そのうえで「疑惑を回避し,注意深く遠ざけるのも公人の務め。内定を辞退するのがある意味でのけじめのつけかた」と話した。

 一方で,村上会長が役員を務める会社などからうけた218万円の政治献金については,「私の政治活動,政治信条に対する献金。かえす考えはない」と説明した。最高顧問についても「会の活動と犯罪は別物だ。ただ,メンバーがやったということなので,捜査の進展を見て考えたい」と話し,すぐに辞任する考えはないとした。

 12月28日,民主党の鉢呂吉雄総務局長は,退院した西村氏と面会し,事情を聴いた。

 岡田克也幹事長が同日発表した談話によると,西村氏は「刀剣友の会」の会長と「政治家と支持者としての一定の関係があった」ことを認めたが,「建国義勇軍事件」とのかかわりについては完全に否定したという。

  http://www.asahi.com/politics/update/1229/003.html

 『朝日新聞』2003年12月30日朝刊。

 

  【筆者コメント】 西村眞悟は議員を辞めない理由に,今回のテロ的事件を起こした〈刀剣友の会〉との「交際に落ち度はない」ことと,「罪を憎んで人を憎まずだ。一つの逸脱行動から全人格を否定することはない」ことを挙げていた。

 だが,そうした理由は,自分の立場を必死にかばうための理屈に聞こえる。事件を惹起させた〈刀剣友の会〉との「交際」があったことじたい問題であるのに,その当人が「問題ない」といいわけするのでは,それこそ「話にもならない話」の「眉唾もの」である。

 西村「ただ道義的責任は感じ」「内定している衆院災害対策特別委員長への就任は辞退する」と対応したのは,今回事件の「責任問題」がこれ以上自身に波及し追及されることを避けたいからである。

 「弁護士として:うんぬんの説明」があったけれども,こういう論法:便法は「悪知恵」の域を出ていない。たしかに,弁護士の資格をもつ人間としてその知識を悪用した「弁解の駆使」はみられる。しかし,西村の態度は,法曹の職業に従事する立場,そして国会議員の立場が,直接政治的に問われることを極度に恐れたものである。

 西村が政治家的なつきあいをもった〈刀剣友の会〉の起こしたテロ事件に「ただ道義的な責任」のみ負うという逃げの姿勢が,基本的に問題ぶくみである。

 西村は〈刀剣友の会〉「罪を憎んで人を憎まずだ。一つの逸脱行動から全人格を否定することはないと強調」する立場にあるようだが,北朝鮮という難物国家との外交交渉を担当,小泉首相の訪問までお膳立てしてきた日本国外務省の田中 均審議官のやりかたが気に食わないといって,この田中個人を猛烈に非難‐攻撃してきた。

 それゆえ,西村が最高顧問に就任し「一定の関係があった」「刀剣友の会」村上会長などが,今回の「テロ」事件をおこしたものと推理されてよいのである。ところが,その「会の活動と犯罪は別物だ」などときわめて特異な思考をしめすのは,さすが弁護士ならではの屁理屈である。

 そのような理屈をさらに敷衍すると,「西村眞悟〈刀剣友の会〉」とは別物:無関係だというごとき,とうていありえない屁理屈さえ導出できる。

 まぜっかえしていうなら,西村はいつから〈刀剣友の会〉の顧問弁護士になったのか。もらった政治献金は実は,弁護士顧問料だったのかもしれない。

 西村は既述のように,「私の(政治)信条をよく理解してくださる好漢」村上会長だといっていた。そして,その者たちがテロ的犯罪を犯したのである。

 〈刀剣友の会〉と暗愚な関係をもった西村は,自分の不徳を恥じるだけでなく,同会より政治献金をうけた関係も深く反省すべきところであるにもかかわらず,もらった献金はかえさないといっている。

 もしかすると,そのお金はもうつかってしまったのか? それとも手もちの現金がなくて,かえそうにもかえせないのか? 

 ふつうならこういう事例では,もらった政治献金をサッサと返却する議員が多い。もっとも,〈刀剣友の会〉は村上会長以下多数逮捕され身柄を拘束されているから,かえそうにもかえせないのか?

  また,西村「辞退したい」と語った「内定していた衆議院災害対策特別委員長への就任」は,「信頼関係にあった人物が犯罪行為に加担したことへの道義的責任」をその理由にしたという。

 けれども,村上氏とが共鳴した思想は,銃弾をぶつけようなどという行動にむすびつく思想ではなかった」とはいいきれないところに,そもそもの問題があったのである。

 要点は,西村の政治的発言が「テロ行為」にむすびつく思想・信条であるか否かにではなく,〈刀剣友の会〉の「テロ行為」をまさしく煽ったそれだったということにある。

   〈刀剣友の会〉「なぜあんな幼稚なことをしたのだろうと思う」と,西村は語った。ともかく,自分の政治的言説の影響力・共鳴力には十分気づいていながらも,いまでは,摘発された今回事件の余波が自身の立場におよばないよう,いいかえれば「疑惑を回避し,注意深く遠ざける」ことに懸命なのである。

 いずれにせよ,西村自身がその会「一定の関係」をもち,「テロ行為」を助長するような「政治家的な言説:思想と信条」を盛んに説いて〔吹いて〕きたのである。

 だからこそ,〈刀剣友の会〉の起こしたような幼稚な犯罪行為が誘発されたといえる(→もっとも,テロ的犯罪が幼稚だなどといえるのか?)

 


  2003年12月30日,記述
  

 


 

  西村眞悟議員が村上一郎会長「刀剣友の会」に与えた影響
           −テロ行為を煽る言説を検証する−
                        

 西村眞悟衆院議員(民主党)は,2003年12月29日,一連のテロ行為を実行した事件で,主犯格とされる「刀剣友の会」会長村上一郎容疑者(54歳)とその会員たちが逮捕された事件に関して,こう述べた。

 西村は,「刀剣友の会」の最高顧問となっているが,今回の「事件は寝耳に。関与したことはない」。ただし,その会との関与をもっていた〔政治献金をうけたり講演依頼に答えたりした〕点に「道義的な責任を感じる」と答えた。

 そして,「国会議員の辞職は考えてもおらず」,同会からうけた「政治献金をかえす必要も感じない」との態度を明らかにした。

 筆者は,自身の「言説:政治的思想と信条」が村上会長「刀剣友の会」に与えた影響力を皆無といいはり,独断的,責任回避的に判断した西村眞悟議員の弁解を疑うのである。

 その証拠といってはなんだが,西村は明らかに,両者のそうした関連性を推測させるに十分な発言を盛んにおこなってきた。

 −−以下は,西村眞悟個人のホームページより拾いあげた〈問題化しうる発言〉の数々である。

 

 ■『眞悟の憂国』より

 ※ 平成14年4月号

 国会内に北朝鮮に拉致された日本人を救出するための議員連盟があった。しかし,4年間休眠を余儀なくされた。そこでこのたび,大幅な改変をおこなうことになった。改変の理念は「行動すること」である。

 ある議員がいった。「尖閣諸島の領有は誰でもいう。問題は,そこにゆくか否かだ。同様に,拉致議連も日本人救出のために行動するかどうかが問題だ。

 朝鮮総連にデモをかけよう

 新潟の万景峰号の税関検査を監視に行こう。そのような議連をつくろう」。

 この新しい拉致日本人救出議員連盟は,超党派の若手を構成員として出発することになる。そして,行動する

 

  http://www.n-shingo.com/getuyou/1404.html

 

 ※ 平成14年11月号

 さて,朝鮮半島とわが国のあいだに,軍事的バランスが保たれているであろうか。

 わが国は,憲法9条の社会党的解釈によって北朝鮮に有効にとどく「攻撃的兵器」は保持していない。

 片や北朝鮮は防衛白書の認めるとおりである。わがほうに落ちるミサイルを実戦配備して核および生物化学という大量破壊兵器を保持している。この軍事情勢を無視して平和が維持されるという考えは「幻想」に過ぎない。

 よって私は,こう決断する

 まず,「非核三原則」はもはや過去のものとなった旨宣言する。そのうえで,同盟国アメリカと協議して日本における対北朝鮮軍事バランスの回復のため,シュミットと同様にみずから核をもたずして核の抑止力を保持する道を選択するのである。

 すなわち,核を「もちこむ」。そして,時間の経過はわがほうに有利に展開するのであるから,北朝鮮にカネを与えず,締めあげるのだ。

 そうすれば,金正日個人独裁体制は崩壊する。そのときはじめて拉致被害者全員が救われ,独裁体制のもとで苦難を強いられた北朝鮮人民が解放される。

 

  http://www.n-shingo.com/getuyou/1411.html

 

 ※ 平成15年4月号

 日本政府は,25年まえ,「人の命は地球より重い」といいわけしながら,人の命を苦もなく奪うテロリストを世界に放した矛盾を無視して恥じることがなかった。

 しかも同時期,10名を越える日本人が北朝鮮に連続拉致されているのに,彼等の人命は無視していたのだ。

 この日本政府の無責任さを点検すれば,政府はテロの被害者のがわにいるのではなく,加害者がわのテロの幇助のがわにいると判断すべきである。そして,これは我が国の政治風土に根ざした病根なのだ。この病根は,テロリストと同様に,地球上から除去すべきである

 

  http://www.n-shingo.com/getuyou/1504.html

 

 ※ 平成15年6月号

 すなわち,わが国は北朝鮮に国民が拉致されることを断じて許さない国家であること。仮りに拉致されておれば,実力で救出しうる国家であること。

 またわが国は,百年まえがそうであったように,国家を自力で守るという国民の覚悟を背景にして,その実力を保持していなければならない。

 したがって,北朝鮮の核ミサイルによる恫喝に対して断じて屈服することのない体制を構築しておかねばならないのだ。

 さらに,国内において強盗団が大量破壊兵器を保有して治安に挑戦することを断じて許さないように,国際社会においてもテロリスト・テロ国家が,核・生物化学兵器を保有することを断じて許さず,その危険性を排除できる国家であること。

 よってわが国は,これらのことを実現するために,不可侵の国家主権を確保しうる実力をもっていなければならない。この実力の主体は国民である。即ち国民は,国を守る義務を有し,この義務を具現化するために国民の軍隊を保持しなければならないのだ。

 以上で,2年後にせまった日露戦勝百周年を祝える国家体制がととのう。そして,肝心なのは,百年前の苦難を思い,天皇陛下が靖国神社にご親拝され,内閣総理大臣が,参拝することである。

 

  http://www.n-shingo.com/getuyou/1506.html

 

 ※ 平成15年9月号

 すなわち,わが国は,独裁者金正日が日本人拉致を公然と認めながら被害者と家族を解放しない時点で,北朝鮮に対する人・物・金の流れを止める経済制裁を断固として発動していなければならない。そして,このたびの6カ国協議に臨む。

 中国やロシアからわが国に,「北朝鮮が音を上げている。この協議の期間中でも制裁を緩和してやってもらえないだろうか」との提案がある。もちろん,これは北朝鮮が,日本の態度を緩和させるために,中国やロシアに懇願した結果である。

 そこでわが国は,おもむろに,北朝鮮による日本人拉致問題をもちだして,つぎのように要求する。

 「貴官らは,日本人のことをご存知ない。自国民が2百名以上北朝鮮に拉致されているのだ。これらの同胞が帰国できなくて,どうして制裁を緩和できるのか。貴国が仲介に入ったとうけとるが,仲介に入った以上,北朝鮮に拉致した日本人をいますぐ帰すように強く圧力をかけるのが,ホスト国の勤めである」。

 現実に,拉致被害者家族会と拉致救出議員連盟は,一貫して北朝鮮に経済制裁を実施するように政府に要請してきたのである。この要請を無視しつづけ,北朝鮮の独裁者の意向だけに気をつかい,「懇願」以外のなにのアクションも起こさなかったのが,日本政府であった

 誘拐犯人に,被害者解放を「懇願」すれば,身代金の要求をよびこむのは自明のことではないか。相手は,世界公認の「ならず者」,「悪の枢軸」なのだ。

 

  http://www.n-shingo.com/getuyou/index.html

 

筆者の コメント】 

 以上に引用した西村眞悟の発言を適宜つなげ,若干の解釈をほどこし,そこに読みとれる真意を指摘することにしたい。

 @ 私:西村は,こう決断する

 A 北朝鮮にカネを与えず,締めあげるのだ。

 B ところが,日本政府はテロの被害者のがわにいるのではなく,加害者がわの:テロの幇助のがわにいるこの病根は,テロリストと同様に,地球上から除去すべきである

 C わが国は,北朝鮮に仮りに拉致されておれば,実力で救出しうる国家であるこの実力の主体は国民である。

 すなわち,国民は国を守る義務を有し,この義務を具現化するために国民の軍隊を保持しなければならない。

  「行動すること」である。

 −−西村がこういう持論を,村上一郎会長に依頼された「刀剣友の会」における講演でも強調したことは,当然,推測されてよいのである。

 D 「刀剣友の会」会長たちの犯した犯罪「テロ的行為」が標的にしたものは,なにか。

 それは,テロリストと同様に地球上から除去すべき対象である「加害者がわの:テロの幇助のがわにいる日本政府」であり,その「病根」であった。

 そして,そのテロのがわに付きテロリストを幇助するもの,いいかえれば,除去されるべき日本政府とその「病根」とは,具体的にしぼりこんで指せば外務省であり,象徴的・代表的には,北朝鮮の小泉首相訪問を実現させる任務を遂行してきた田中 均外務審議官である。

 その結果,テロ的行為の標的になった田中審議官の自宅に爆弾もどきの装置がしかけられたのである。このように,今回テロ「事件の前後における関連性」を推理しその因果関係を想定しても,なんら無理はないどころか,しごく至当な解釈である。

 E そこでさらに重ねて,次段の引用を参照すると,西村の真意はよりいっそう明快になる。

 

 ■ 2001年より2002年3月まで『大阪新聞』にて毎週金曜日に連載されていた西村眞悟のコラム「眞悟が征く」より。

 

 ※ 眞悟が征く:平成13年11月29日掲載

 日本政府は,北朝鮮核開発疑惑のとき,すでに世界注視のなかで朝銀から北朝鮮政府に金が流れていることを認めているのだ。

 したがって,北朝鮮への送金が朝銀破綻原因のひとつかどうか,徹底的に究明すべきだ。この究明なく公的資金を投入すれば,わが国は世界からテロ国家に資金を提供する「テロ支援国」とみなされるではないか。

 だいたい,老若あわせて十万人に満たない北朝鮮系在日朝鮮人が全国9箇所の朝銀の経営基盤になりうるはずがない

 1兆円を投入して救済してもまた破綻する。このことを政府は無視し,闇雲にカネを出す動きだ。マスコミも国民にしらせない。

 わが国中枢に北朝鮮支援構造があると断定できる。小泉総理の聖域なき構造改革も,不思議に売国的構造にはおよばないのだ。

 

  http://www.n-shingo.com/sinbun/131129.html

 

 筆者の コメント】

 −−「眞悟が征くとカッコよくのたまうが,それではと,その「征く(ゆく・いく)」ということばの意味を辞書を引いてみたら,こういう説明が出ていた。

 軍人が出征する意で「行く」「征く」と書く。

 F はたして,眞悟君はどこへ「征く!」のだといったのか。それは,筆者がここに参照したのホームページやほかの著書を読めば,すぐに理解できるものである。

 そして,それを理解したつもりになって応え,テロ的犯罪行為を犯した人間‐集団が,村上一郎会長とする「刀剣友の会」とその会員たちであった。

 眞悟「征け」と督励した〔「行動すること」けしかけた〕から,これに共鳴‐賛同し,触発‐煽動された村上一郎たちが,いくべきところへ「征った」のである。

 G   ということで,朝鮮征伐隊」「国賊征伐隊」「建国義勇軍」などを称した,村上一郎会長など「刀剣友の会」の会員たちは,どこへテロをしかけに「征った」のか?

   それはまず,「テロリストと同様に」この地球上から除去すべき「テロの被害者のがわにいる:加害者がわのテロの幇助のがわにいる」日本政府の病根であった。今回の事件はその点で,外務審議官宅への不審〔爆発状の〕物設置という事件となって現われた。

 征伐隊はさらに,在日本朝鮮人総連合会新潟県本部・朝銀中部信組名古屋支店をテロの標的にする銃撃事件広島県教組,オウム真理教(アーレフに改称)東京道場をテロの標的にする銃撃事件,などを起こした。

 H  ここまで説明すれば氷解するのは,こういう点である。つまり,西村眞悟議員の言説と「刀剣友の会」会員たちのテロ的犯罪とのあいだには,有意な関連性がある。

 したがって,今回の事件を聞いた眞悟君が驚いたポーズで「寝耳に」と答えたその演技力は買えるにしても,はっきりいって,がまさかそんなふうにいいつくろうとは思ってもいなかった。

 そのような珍文句を聞かされた第3者のほうこそ,「鳩が豆鉄砲を食らった」ような気分になった。

 眞悟君もやはり「議員バッチ」をうしなうことがコワイのである。今回の事件にかぎっては,ふだんの勇ましい〈眞悟ラッパ〉もその音をうしなった感がある。

 なにせ,2003年11月9日第43回衆議院選挙に立候補した西村候補が当選してから,まる2カ月も経っていない時期である。ちなみに,今日は12月31日であり,今回の事件に関して逮捕者が出て,あなたとの関係が問題になるのは,それより10日まえの12月21日以降であった。 

 眞悟君本来の思想・信条に照らせば,「刀剣友の会」会員たちに対して「オマエタチよくやった」と褒めてあげたかったはずである。というのも,「拉致された者を実力で救出しうる国家の,その実力の主体は国民である」と教示したのは,ほかならぬだったからであり,なによりも,同会の会員たちは《その点:「行動すること」》を忠実に体現してくれたからである。

 もっとも,「刀剣友の会」会員たちにおいては,「国家の実力の主体は国民である」という意味がとても単純にうけとめられた。そのため,自分たち国民がその主体そのものとなって実力を行使してよい,→テロ行為を実行してもよいと短絡し,今回の事件:犯罪を惹起する顛末とあいなった。


 西村眞悟議員のテロを容認する発言】

 村上一郎容疑者が計画したとされる田中 均外務審議官宅の不審物事件について西村眞悟は,

 「言語道断だが田中氏の対北朝鮮外交での国益に反する行動が拉致被害者の運命をも左右する事態をみて,発火装置を置くのが当たりまえと思う国民が出てくる

との見解をしめした。

 ◎ 2003年12月29日,退院後の事件発生に関する記者会見。
    http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20031230/mng_sya_016.shtml


【村上一郎容疑者のテロ的発言】

 「刀剣友の会」会長村上一郎容疑者は,ほかにもコラムの中で,

 「(刀剣友の会は)日本を真の独立国に変える現代の『さむらい』の集まり」,

 「世のため人のため,国賊は,さっさと死んで消えてなくなれ

などと独善的理論を展開していた。

  http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20031231k0000m040096000c.html


 結局,「刀剣友の会」の犯罪行動は,政治家「西村眞悟議員の言説」を触媒にしてこそ,生じたのである。

 したがって,そうした「理の必然的な現象がある今回の事件」を,「寝耳に」なる表現でもってその根本因をスリかえ,自分への延焼(=責任を追及され議員辞職をせまられる事態)を食いとめようとしているのが,いまの西村議員の立場‐状況である。

 そういう事態のなかにおかれた西村議員の姿をみると,この人がなにごとにさいしてもつねに「誇示してきた勇躍なる態度」が,いちじるしく損なわれてしまったようにみえてしかたない。

 もとはといえば,今回のような事件=テロ行為が実際に生起したことからも理解できるように,「行動すること」を教唆し,その種を提供したのは西村眞悟:あなたではなかったか?

 その核心を指摘されては非常にこまる,必死になって火消ししたいという気持が,あなたの弁明にはひしひしと感じとれたのである。

 しかし,西村はそう弁明したものの,記者会見のなかではなおも,言語道断だが」と断わりつつ,田中外務審議官氏の「国益に反する〔国賊的な〕行動」は「発火装置をおかれて当たりまえと思う国民が出てくる」といってのけた。

 これがテロ的犯罪行為を容認する発言でなくて,いったいなんであるのか? 

 とりわけ,「当たりまえと思う国民が出てくる→国民が許さない」というような理屈・文句をもちだして,自説「テロ容認の立場」を正当化しよう〔=残そう,いいはろう〕とする論法は,下心みえみえ,卑怯な自己絶対化の理由づけである。


  つぎの記述は約20年まえもの文章であるが,2003年3月イラク戦争をしかけたアメリカ帝国主義と,最近における西村眞悟の言説を的確に批判するものとなる。

 なお,この文章を引用した『オーウェル現象の社会学−国家と個人−』世界思想社,1984年は,1983年秋の「訪朝団」にくわわった人物の著作であり,当時の北朝鮮社会をありのまま,冷静に観察した報告内容を書いている。

 ◎ 主に,アメリカ帝国主義のイラク戦争などに対して妥当する批判−

 戦争は,宣伝,謀略,政治工作,その他あらゆる策略を必要とする。それは対峙する指導部の頭脳の闘いだ。

 しかし,つねに流されるのは一般市民の血と涙と汗である。あらゆる軍事的な事柄には血の臭いがまつわりつくのだが,自分はけっして血を流すことがないところにいるとしっている者にとってのみ,軍事はゲームに似た面白味を提供する。

 戦争は機械化されるにつれ,闘争本能とはまったく無縁のところで戦われるようになった。自分とほとんど同じ暮らしをし,同じように朝食をとり,同じような人生の出来事に一喜一憂している者同士がある日,突然闘いの相手となる。

 しかも,相手の顔すらしりようのない隔たったところで生死をわかつ爆発を起こすために机上または艦上で,あるいは基地で入力のスイッチを1本の指が事務的に適確に押すのである。

 ◎ 主に,最近における西村眞悟の言説に妥当する批判

 わたしは軍事的な対峙の図式を考えるように求められたり,力による報復の準備の必要や軍事的均衡が平和の恒常性の条件となることを認めるようにすすめられるたびに,その理論を表明する人がどこからいくらもらっているのか,軍人は給料はいくらで,死んだらいくらもらうのかと考える。

 拡大均衡説であれ,武力外交説であれ,軍備強化が国を救うという理屈を立てようとする人は,軍事につながる部分で生計を立てているか,あるいはそういう人に依存している。

 その人々にとって,軍事上の予算措置の凋落は生活水準の低下につながるのである。脅威がおおきくとらえられれば,それだけ軍事に金がつぎこまれ,ひいてはみずからを肥やすことになる。

 「軍備増強は必要です」という人に,「あなたはそれが実現するといくらのもうけになるのです」という質問や眼差しを向ける人はご明察なのである。

 

 小野 修『オーウェル現象の社会学−国家と個人−』世界思想社,1984年,63頁。

 
 ちなみに,西村眞悟の執筆した2著作は,つぎのように紹介されている。 

  西村眞悟著『闘いはまだ続いている』展転社,2003年7月の宣伝文句は,こうである。

 「拉致被害者を奪還せず日本は主権国家といえるのか! 無力化した国連,崩壊した世界秩序を前に決然たる国策の遂行と確固たる国防体制の確立を説く。反町 勝夫,石原慎太郎らとの対談も収録」。 

 西村 眞悟著『誰が国を滅ぼすのか 靖国,憲法,謝罪外交』徳間書店,2001年9月の内容説明は,こうである。

 「教科書問題から靖国問題へ。近隣諸国との軋轢が深まるなか,日本は国家として毅然とした態度をしめすことができるのか。爆弾発言でしられる著者が,小泉政権の基本姿勢を問う」本。

 −−●1 西村眞悟は,1948年大阪府生まれ,京都大学法学部卒業。衆議院議員,弁護士。

 国家主権にかかわる問題に関する積極的な発言・行動でしられる。ほかの著書に,『亡国か再生か』2000年,『誰か祖国を思わざる』1997年などがある。

 もちろん,「爆弾発言」でしられる西村当人が「実際に爆弾を投げ」ることはなかった。

 しかし,西村を政治理念的に支持する集団の構成員たちが「爆弾まがいの装置」をしかけたり「銃弾を送り」つけたりするかたちをもって,本当に物理的な暴力:テロ的行為をくわえ脅迫するという犯罪・事件を犯した。しかも,その標的になった対象は,西村がつねづね言論面で猛攻撃をくわえてきた相手であった。

 したがって,今回テロ事件をおこした「刀剣の会」に関してもっていた西村議員の「一定の関係」とは,重大かつ深刻にうけとめるべき内実がある。

 −−●2 ここで,1945年8月以前まで歴史をさかのぼらせ,話をすることにしたい。

 西村眞悟の著作を宣伝する修辞:「世界秩序を前に決然たる国策の遂行と確固たる国防体制の確立」というものは,戦時期において『旧大日本帝国』が高唱してやまなかった「東アジア侵略戦争を国是とする考えかた」にしめされた文句と同一,瓜二つである。

 2世紀にまたがる歴史を乗りこえてもなお,そのような「国策の遂行」だとか「国防体制の確立」だとかいう文句を聞かされると,筆者のように〈戦争の時代〉を学習‐研究してきた人間は,この西村眞悟という政治家は「過去の亡霊」がなりかわって〔=血迷って〕登場してきた,いいかえれば「お化けが出てきた」と勘ちがいしそうになる。

 同じことをいわせるにせよ,すこしは修辞を異ならせて表現するのではなく,わざと旧大日本帝国時代の,それこそやたら時代がかった,陳腐なものいいをする。手垢にまみれたというか,つまり,血糊がべったりこびりついた「旧日帝:過去の修辞」を好んでつかいたがるその意図なり心情なりは,いったい奈辺にあるのか。

 懐古趣味もたいがいにしろ(!),といいたくもなる。

 京都大学法学部を出た弁護士先生,恐らくそのような古くさい修辞:表現を意識的に使用しているのである。だが,なにかずいぶん意地になってそのような大日本帝国風の表現方法を採っている節がある。

 要は,出版社の宣伝文句からわかるだけでも,非常に子ども染みた印象がある。

 −−●3 ところで,現状における日本の軍隊はいちおう「自衛隊」を称しており,陸上・海上・航空の3自衛隊がある。

 イラクへの派兵問題をどのように解釈するかはさておき,この日本の軍隊=軍事力は,日本を侵略してきた他国軍・軍事的勢力に自衛‐反撃し,撃退‐撃滅する任務を課せられている。いわゆる「専守防衛」

 日本の自衛隊が本来有する「軍隊としての任務」を表現するのに,あえて1945年以前とまったく同じ修辞を,しかも故意にそれをつかって表現する西村眞悟の〔著作の宣伝文句などにもみられる〕精神構造は,戦前の旧日帝を素朴に懐かしがるイデオロギー類型のひとつだ,と判断できる。

 21世紀になったいまの時代状況である。同じような中身を申し述べるにしても,現段階的にもっと洗練され(sophisticated),確実にグレードアップ(grade-up)された修辞を工夫できなかったものか。なんというか,京都大学法学部の学歴も最近はだいぶ品質劣化をきたしたようである。残念!

 西村は,国家防衛のための反撃力にとどまらず,必要ならば有事発生の事態に備えて先制攻撃をできる軍事力を構築せよ,といっている。 

 そして,北朝鮮に拉致された日本人・家族全員を救え,あるいはまた,核兵器とミサイルを保有しているその国を殲滅することのできる軍事力を整備せよと,声高に発言したきた。

 「攻撃は最大の防御!」というわけである。

 すでに施行された有事法制関連3法は,日本がアメリカ一辺倒の軍事協力をする立法である。それはまた,日本の自衛隊という軍隊が「自衛隊:防衛隊」でなくなった事実を意味する。 

 −−●4 今回テロ行為事件との関係を西村議員本人に事情を聞いた民主党が,どのように判断するかはともかく,筆者の目からみて,今回事件に関する西村の強い影響力・感化力の介在・発揮は「をみるより明らか」である。

 西村の言説に顕著な反応をしめしたのが,今回テロ行為的脅迫事件を起こした村上一郎を会長とする「刀剣の会」である。

 一歩ゆずったにせよ,両者のあいだには「なんらの関連性もなかった」ということはできない。そうではなく,「なにかの関連性がまちがいなくあった」のである。

 西村は,村上会長ら「刀剣の友の会」の犯罪行為を「なぜあんな幼稚なことをしたのだろうと思う」と論評した。けれども,そんな幼稚なテロ的犯罪を惹起させるような「さらに幼稚」な言説を提供した,自分の浅はかさには気づかない振りをしている。 

 


  I つぎに西村が「北朝鮮への送金が朝銀破綻原因のひとつかどうか徹底的に究明すべきだ。この究明なく公的資金を投入すれば,わが国は世界からテロ国家に資金を提供する「テロ支援国」とみなされるではないか」と,疑問を投じている点にすこし論及したい。

 朝鮮民主主義人民共和国(いわゆる北朝鮮)あるいは金 正日総書記の手元に日本政府の公的資金が流入したかどうかについては,まだなんの証拠もなく解明されていない点であるから,ここでは議論すべき余地はない。

 ただ,在日朝鮮人系あるいは在日韓国人系の中小‐零細の金融機関「信用組合」に日本政府の公的資金が投入された点は,ほかの大手そのほか日本の金融機関に対して投入された公的資金とも比較考量し,理解する余地がある。

 在日韓国・朝鮮人も日本政府に対して,すくなくない税負担をしてきており,しかも,その民主主義的なみかえりとしての参政権や市民権などの政治的な諸権利は,皆無であったり非常識な制約・制限をうけたりしてきている。

 国籍がないのだから,市民でも住民でも,もちろん「国民」でもないとする,ある意味での虚構:虚制をもって,在日外国人としての韓国・朝鮮人を処遇してきた日本政府の立場は,旧日本帝国主義の時代より連綿する歴史的責任を否定した,無責任かつ不当・不法なものである

 もっとも,在日外国人でも「国民健康保険」に加入しているのだが,この面だけでは,他国籍を有する外国人であっても,名誉日本人あつかいされているというわけである。

 ほかの日本の金融機関と同じに,在日韓国・朝鮮人系金融機関「信用組合」に対しても,日本政府がその救済のために公的資金を投入したことは,西村議員も承知のようにけっして不適切なものではなく,当然の措置である。

 ただし,北朝鮮への公的資金流入の虞れを危惧するならば,いままで日本企業の救済のために投入してきた公的資金何兆円・何十兆円を,むしろ莫大なる無駄遣いだととらえて非難するほうがさきではないのか。

 北朝鮮関係の事案になるとやたら目くじらを立てて非難・攻撃を繰りだし,ひどい興奮状態におちいる西村議員の口吻には,尋常でないものを感じとる。このことは,筆者のみが感じる杞憂ではあるまい。

 

 


  2003年12月31日,記述
  

 

 

 −−2005年9月15日西村眞悟議員は,自民党が圧倒的多数の当選者〔296名〕をもって大勝した衆議院選挙後に開催された「民主党の両院議員総会」で,小泉純一郎首相について「狙撃してもいい男」と発言し,周囲からの批判をうけて,その直後に訂正した

 『朝日新聞』2005年9月16日朝刊。

 

 2005年9月17日朝日新聞「社説」は,そうした西村眞悟議員の発言を,こう批判している。

 

■「狙撃」発言  口に出すおぞましさ■

 政治の場で使われることばは,ここまで乱暴になってしまったのか。

 〔2005年9月〕15日に開かれた民主党の両院議員総会でのことだ。小泉首相の掲げる郵政民営化を批判して,西村眞悟衆院議員がつぎのように発言した。

 「マネーゲームの世界に国民をなだれこませているのが小泉なんです。あれは狙撃してもいい男なんです」。

 

 周囲から「撤回しろ」との声があいついだため,西村氏は「みんながいうから訂正します」と応じた。

 「狙撃してもいい」では,政治テロを容認しているとしかうけとれない。当人は,単なる比喩で訂正もした,と弁解するかもしれないが,そもそも公の場で口にできることばとは思えない。政治家の発言の責任を厳しく問う欧米諸国だったら,進退問題に直結しただろう。

 日本では近年,政治の場でのことばがすさんでいる。強い表現,刺激的ないいまわしを使ううちに,ことばの重さを忘れてはいないだろうか。

 2年前,日朝交渉を担当する外務省幹部の自宅で爆発物を模した不審物がみつかった。そのさいに,石原慎太郎東京都知事は「爆弾を仕かけられて当たりまえ」と述べた。私たちはこの発言を「テロ容認そのものだ」と批判した

 個性的な政治家が口を滑らせただけのことだ。いちいち目くじらを立てるのは大人げない。そんなみかたもあるだろう。しかし,テロを認めるような言動は,どんなささいなものであれ,みすごしてはならないと考える。

 

 武力や暴力による言論の否定は,民主主義社会を破壊することだ。乱暴な言葉に慣れっこになり,そうした危うさへの感度が鈍ることを恐れる。

 それにしても解せないのは,西村氏が民主党にいることだ。小沢一郎氏の率いた旧自由党に属し,あとに合流した経緯はわかる。しかし,民主党はアジア重視の外交を唱え,岡田代表は首相の靖国神社参拝に反対している。

 一方の西村氏は靖国参拝に賛成したうえ,日本の過去の戦争は自存自衛のためであり,侵略戦争ではないと断言する。

 1997年には中国と領有権を争っている東シナ海の尖閣諸島に上陸した。このときは石原氏が船で同行している。

 1999年には雑誌の対談のなかで日本の核武装の検討を唱え,防衛政務次官を辞任した前歴もある。あまりにも考えがちがいすぎる。

 それだけにとどまらない。

 2003年に「建国義勇軍」や「国賊征伐隊」を名のって広島県教組などに銃弾を撃ちこんだ刀剣愛好家団体の最高顧問を務めたことがある。その団体の会長が役員である会社から政治献金をうけとっていた。

 「狙撃してもいい」という西村氏の発言に,その場で何人かの民主党の議員が声をあげて撤回を求めた。適切な判断だったと思う。しかし,解党的出直しをいうのなら,こうした資質の政治家を抱えつづけることの当否についても,真剣に考える必要がある。

 


2005年9月18日,記述